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理学療法 作業療法|水分制限が心不全増悪因子?(心臓リハビリ、心リハ)

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おはようございます。毎週土曜日、リハビリ専門コラム(内部障害)担当の眞鍋です。

今週のテーマは「水分制限による心不全憎悪」についてです。

 

 

心不全患者さんでは、

通常水分制限

が行われます。

 

これは、

よく知られている

ことですよね?

 

今回のケースは、

水分制限が仇となって

心不全の増悪

を起こしてしまいました。

 

いったい、

なぜ水分制限が

心不全の増悪の

要因となってしまった

と思いますか?

 

今回は、そこを探っていきましょう!

 

 

1. 【理学療法士 作業療法士の基礎】そもそも「なぜ心不全患者さん」が水分制限をするのか?

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これは言うまでも

ないと思いますが、

一応確認しておきましょう。

 

心不全患者さんというのは

基本的に心臓の予備力が

低下している状態なので、

健常な心臓であれば

負担とならないような

負荷でも心負荷が強くなり

心不全増悪

に至ります。

 

その、

負荷として

代表的なものがこの水分

です。

 

口から取り込んだ水分は

吸収されて血管内に入ります。

 

そうすると

循環血液量が増えます。

 

心臓は、

たくさん血液が

かえってきたら

たくさん血液を拍出する

性質をもっていて

これを

スターリングの法則」

と呼びます。

 

あの有名なやつです。

 

心臓は心筋という

筋肉でできているので、

長さ張力曲線から、

たくさん血液が心臓に

入って心筋が引き延ばされると、

その分たくさん血液を拍出する

ということになります。

 

だから、

水分を多くとることは

心臓の負担

となり得るわけです。

 

 

2.【リハビリの臨床でもあり得る?】 水分を制限すると人はどうなるか

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制限するとはいえ、

水分は生命維持に

欠かせない物質

です。

 

本来、

水分が不足すると

人の身体は

水分を求めます

 

口渇中枢が刺激されて

飲水行動を起こすように

指令が起こります。

 

また、

水分が足りないので

尿の排出を抑制

します。

 

きわめて単純で

合理的な反応ですよね?

 

だから、

基本的には

適度な水分が望ましくて、

過度な制限には

人は耐えられない

ものです。

 

中には、

ストレスの原因となる方も

いますので、

心不全だからと

一概に水分を制限するのも

考えもの

だと感じています。

 

さらに、

夏の暑い時期だと

脱水症や熱中症の原因

ともなり得ます。

 

熱中症」に関しては下記記事に記載しておりますので参考に ↓

子どもを持つパパママリハビリ職は必見!「熱中症」の病態・症状・後遺症  

 

 

また、

利尿剤を使用していると

利尿が効きすぎて

水分制限と相まって

脱水症となること

があります。

 

これを、

「医原性脱水」

と言います。

 

心不全の増悪も

望ましくない

ですが、

だからといって

脱水になるのも

困ります。

 

夏場の心不全管理

というのは、

なかなか難しいもの

があります。

 

 

3. 【リハビリ職だからこそ】合併症をきちんと確認して個別の生活指導を行いましょう

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入院中は、

お茶の量を調整するだけ

なので簡単ですが

在宅での生活で

水分制限をすることは

なかなか難しいもの

です。

 

では、

冒頭でお話しした方は

「なぜ水分の制限が

心不全増悪の要因

となってしまったのか?」

 

貴方はもうわかりましたか?

 

その方は、

有料老人ホームに入所

されておりました。

 

医師からは、

水分の過剰摂取は

控えるよう

言われていたようで、

それを忠実に守ったのか

その施設では

飲水は500mlまでと

決められていた

そうです。

 

しかし、

この方は

糖尿病のコントロール

あまりよくありません

でした。

 

糖尿病と言えば、

 

多飲

 

多尿

 

口渇

 

体重減少

 

という症状を

思い浮かべるでしょう。

 

そう!

 

「口渇」

です。

 

糖尿の患者さんは

口の渇きを感じやすいので、

この飲水制限は

この方にとっては

かなり負担でした。

 

入院中なら

特別な環境だから

まだ我慢できても

自分の家である

老人ホームで

それはなかなか

我慢できません。

 

この方は

部屋の水道の水を

大量に飲んで

口の渇きを潤していた

そうです。

 

施設は

そのことを

知らなかったようですが

結果的に、

過度な水分制限が

心不全増悪の足掛かりとなり、

さらに、

糖尿病への配慮が足りない

個別性のない心不全管理指導

このような結果を

招いてしまった

と考えられます。

 


4.【 まとめ】リハビリ職も水分制限と心不全の関連性を考えるべき

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このようなケースが

実際どの程度存在するのか?

はわかりませんが、

理屈としては

十分あり得ること

だと思います。

 

水分制限を行うこと

自体は悪くありません。

 

私個人的には、

糖尿病の管理の問題と

口渇時の対応指導が

足りていなかったこと

が問題である

と考えています。

 

口渇とは

口の渇きであり、

のどの渇きではありません

 

だから、

水を飲まなくても

口に水を含むだけで

ある程度症状は緩和

できます。

 

血糖値の管理を良くすれば、

症状の緩和も期待できるでしょう。

 

そのような配慮をせず、

心不全だからと言って

安易に水分制限をしてしまうと

このような結果を

招いてしまうかもしれません。

 

個別性のある生活指導を

心がけていきますと、

より多くの患者さんが

救われることでしょう。

 

是非、今回の記事を参考にして臨床にのぞんでみて下さいね!

 

【著者プロフィール】

真鍋 周志

急性期病院勤務理学療法士

専門は内部障害理学療法

理学療法士が生涯学べる環境を作りたいと考えています。

ブログ:http://gigaantena.com/ptstudy/

FB:https://www.facebook.com/reha.internal/

 

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