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【理学療法 作業療法】心不全における胸水貯留の原因と特徴とは?(リハビリ、評価)

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おはようございます。毎週土曜日、リハビリ専門コラム(内部障害)担当の眞鍋です。

今週のテーマは「心不全における胸水貯留の原因と特徴について」です。

最近、筆者の臨床上「胸水貯留患者さんが多い」ため、今回の記事で「心不全と胸水」について思うことをまとめました。

 

1.【理学療法士 作業療法士の基礎知識】胸水とは?

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胸水というのは、

胸膜の中にある水です。

 

胸膜は肺の周りにあり、

壁側胸膜と臓側胸膜の

2枚の膜から成っている

ので、

間に空洞があり

そこに水が

溜まっている状態

です。

 

二枚の膜の

潤滑油のような

働きをしている

と言われています。

 

正常でも、

胸水は存在していて、

毎日生産と代謝

を繰り返しています。

 

胸水が足りなくなる

ということは、

あまり聞いたことがないのですが、

溜まりすぎると問題視

されます。

 

いわゆる、

「胸水貯留状態」

です。

 

溜まっている場合は、

呼吸器関連症状が出る

ので

対症療法が必要

ですが、

問題はなぜ溜まったのか?

です。

 

量が多ければ、

胸水穿刺を行い、

水を抜きます

 

「膝に水がたまったら抜く」

というのと

似たような感覚ですが、

やはり、

肺のすぐ近くの

胸膜腔に針を刺す

のは危険も伴います。

 

胸水穿刺は、

異常に溜まった

胸水を抜くという

治療的側面だけでなく、

抜いた胸水の成分から

胸水の原因を追究する

検査としての意味合い

もあります。

 

いずれにしても、

「原因は何か?」

そこを突き止めないと、

胸水は、

結局また溜まって

しまいます。

 

 

2.【リハビリの臨床で考慮すべき】胸水が貯まる原因とは?

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今回は、

心不全において

胸水が貯まる原因」

を考えてみたいと思います。

 

1番思いつきやすいのは、

「うっ血の影響」

ではないでしょうか?

 

「なぜ胸水の貯留と

循環のうっ血が

関係するのか?」

 

あなたも少し考えてみて下さい。

 

・・

 

・・・

 

・・・・

 

では、

一緒に考えていきましょう。

 

胸水も水分なので

吸収されたら

静脈に戻ります。

 

リンパも静脈に戻りますから。

 

ということは、

その静脈が、

うっ血して

静水圧が上昇すると

胸水の吸収(代謝)が

悪くなり胸水が貯まる

ことになります。

 

要するに、

「通常であれば、

はけていた水が

はけなくなって

しまった状態」

です。

 

さらに、

特に高齢心不全患者では、

アルブミン血症を

合併していることが

少なくありません。

 

アルブミンの状態だと

血漿浸透圧が低くなるため、

血管内に水分が入りにくくなり

「胸水貯留を悪化」

もしくは

「遷延させる」

要因だと考えられます。

 

さらに、

腎機能障害を

合併している場合は

胸水が抜けにくい

印象があります。

 

おそらく、

腎臓で血液をろ過して

尿として水分を排泄する

機能が弱いため

うっ血がとれにくいことが

一つの要因ではないか

と考えられます。

 

通常の利尿剤で

利尿を促していく

のであれば

条件として、

「腎機能が悪いのは不利」

だと言えます。

 

これら、

心不全患者に

起こる胸水を

「漏出性胸水」

と言います。

 

一方、

肺炎などの

炎症に起因して

生じる胸水は

「滲出性胸水」

と呼ばれます。

 

 

3.【リハビリ職 必須アセスメント】胸水貯留患者の特徴

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一般的に、

胸水貯留に伴う症状は

「呼吸苦」

です。

 

「胸痛」も症状として

よくあげられています。

 

「胸膜性胸痛」です。

 

これらの症状は、

胸水の症状として

あげられますが

心不全

においても

認める症状です。

 

「どちらの症状なのか?」

鑑別が難しいケースも

少なくありません。

 

いずれにせよ、

胸水の治療としては、

その原因疾患の治療が

基本となるので、

狙うべきは

心不全

となるでしょう。

 

心不全のみで、

そこまで大量の

胸水が貯留することは

マレだと思いますが、

もし明らかに

胸水貯留が

呼吸苦の原因

と考えられる場合は

胸水穿刺をすることもある

でしょう。

 

先ほども述べたように、

胸水穿刺をすれば

胸水の検査ができるので、

胸水貯留の原因の精査

ができます。

 

心不全以外の

別の疾患が隠れている可能性

もあります。

 

というより、

心不全以外であれば

胸水穿刺をして

原因の精査を行う

ことが通常です。

 

「Lightの基準」など

検査の結果を

判断する指標は

いくつかあります。

 

あと、

胸水貯留患者に多いのが、

体位の変化に伴う呼吸苦の出現

です。

 

肺炎など、

他の呼吸器疾患においても

類似の症状はあるのですが

胸水貯留患者に多いのが

「臥床に伴う息切れ」

「SpO2の低下」

です。

 

換気血流比不均衡に

伴うものだと

予想しています。

 

他の呼吸器疾患より

姿勢の変化に伴う

水分の移動が早いので

呼吸状態の乱れが

生じやすいのではないか?

と考えています。

 

この息切れの

出現しやすさによって

胸水の発見に至った例を

何例も経験していますので、

一つの指標として

知っておくとよいでしょう。

 

 

4.【リハビリテーション】胸水があっても離床してもよいか

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これは、

「よく聞く質問」

です。

 

胸水が貯留していることが

離床中止の基準になる

とは聞きませんので、

「禁忌ではない」

でしょう。

 

胸水の貯留といっても

程度にもよりますし

元々のその患者さんの

呼吸機能や心機能によって

状態は違ってくるので

一概に言うことは困難です。

 

明らかに片肺の含気量が減少し、

「胸郭がぺちゃんこ」

になっているような状態は

かなりの胸水です。

 

無気肺も

広範囲にわたっている

でしょうから

「胸水の治療が優先」

と判断されても

おかしくないですし、

一度、呼吸を乱してしまうと

回復に時間を要する

ことがあります。

 

ここは

医師と充分に相談

をしましょう。

 

先ほども述べたように、

胸水貯留があると

姿勢の変化によって

「息切れ」「SpO2の低下」

が生じやすいため、

慎重に離床を進める必要

があります。

 

つまり、

胸水があるないだけではなく、

その他の条件も考慮して

離床可能かどうかの判断が必要

となります。

 

胸水の場合は

離床を妨げるとしたら

「呼吸数」

「SpO2の低下」

でしょう。

 

言うまでもありませんが、

胸水どうこうではなく

全身状態が不良の場合は

離床できるかどうか

複数の要因から

判断してください。

 

 

5.【まとめ】リハビリテーション職なら知っておきたい「胸水の評価・アセスメント」

今回は、

「胸水について」

簡単にまとめてみました。

 

臨床、

特に急性期では

よくみるでしょうから、

日々の臨床における

アセスメントに役立てて

もらえれば幸いです。

 

リハストリートでは、今後も専門的な学習コラムを配信して参ります。

次回も楽しみにしていて下さいね!

 

【著者プロフィール】

真鍋 周志

急性期病院勤務理学療法士

専門は内部障害理学療法

理学療法士が生涯学べる環境を作りたいと考えています。

ブログ:http://gigaantena.com/ptstudy/

FB:https://www.facebook.com/reha.internal/

 

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