【理学療法士・作業療法士必見】高強度はもう必要ない!高齢者リハビリテーションにおける最新筋トレ理論
リハビリの現場で最も相手をすることになるであろう世代はやはり高齢者の方です。
- リハビリテーションで鍵になるのは『総負荷量』
- リハビリテーションにおける「筋力トレーニングでは全可動域」で行う
- リハビリの臨床で「スロートレーニング」はあまり意味がない
- リハビリテーションの筋力トレーニングでは「頻度も総負荷量次第」
- 【まとめ】
リハビリテーションを行っていく中で、
「徒手療法」はもちろんのこと、
「運動療法」で頭を悩ませるのが、
「トレーニングの強度、回数、セット数」
ではないでしょうか?
特にリハビリでは、筋肥大を狙いたいわけですが、
一般的に筋肥大を起こすためには中強度(4~12RM)以上が必要
と言われています。
しかし、
強度が高いと関節への負担、血圧の上昇など高齢者にとっては非常にリスクが高く
なってしまいます。
そのため、専門知識を持っているのも関わらず、
「無理のない範囲でやってくださいね。」と言わざるを得ない
ということも多いのではないでしょうか?
しかし、もう安心です。
最近の知見では、
「高強度でなくても筋肥大を起こすことは可能である」
ということがわかってきました。
リハビリテーションで鍵になるのは『総負荷量』
2010年、カナダにあるマクマスター大学のバードらの研究で以下のような研究が行われました。
トレーニング経験者を集め2つのグループに分け、
1RMの70%以上の強度でレッグエクステンションを行う。
一方のグループは1セット、もう一方のグループは3セットをそれぞれ疲労困憊になるまで行った。
1セットのグループでは平均総負荷量は942kg、3セットのグループは2184kgとなった。
さらにトレーニング後の筋タンパク質の合成率を計測すると総負荷量の高い3セットのグループに優位な増加を認めた。
さらに1RMの90%の高強度でのレッグエクステンションを行うグループと1RMの30%の低強度でのレッグエクステンションを行うグループに分けて、それぞれ疲労困憊になるまで行った。
総負荷量は高強度グループで710kg、低強度グループは1073kgとなった。
筋タンパク質の合成率は総負荷量の高い低強度グループがより高い増加を示した。
この結果から、
「筋肥大を狙う場合、低強度でも回数とセット数を増やし総負荷量を高めれば、
高強度トレーニングと同等の筋肥大効果が得られる」
ということが分かりました。
リハビリテーションにおける「筋力トレーニングでは全可動域」で行う
筋肥大には総負荷量が鍵になるのですが、
もう一つ鍵となるポイントがあります。
それは、
「どの範囲まで動かすか?」
という点です。
可動域をフルに使う「フルレンジ」なのか?
中間の角度で動かす「パーシャルレンジ」なのか?
答えは・・・
「フルレンジ」
です。
2010年、ブラジルのフェデラル大学のピントらの研究で以下のように報告されています。
40名の被験者に対してアームカールをフルレンジで行うグループとパーシャルレンジで行うグループに分けて、ともに週2回のトレーニングを10週行った。
その結果、パーシャルレンジに比べてフルレンジのグループで明らかな筋肥大の増大が認められた。
また2013年、デンマーク・コペンハーゲン大学のブルームクイストらの研究で以下のように報告されています。
スクワットにおいて被験者をフルレンジのスクワットのグループとパーシャルレンジのスクワットのグループに分け、週3回のトレーニングを12週間継続した結果、パーシャルレンジのスクワットのグループに比べ、フルレンジのスクワットのグループの方が脚の筋肉量が優位に増大した。
これらの結果から、
「トレーニングはフルレンジで行った方が筋肥大の効果が高い」
と言えます。
しかし、
フルレンジでのトレーニングはパーシャルレンジでのトレーニングよりも、筋損傷の回復時間が延長することもわかっているため、高強度で行う場合は回復期間を考慮
してプログラムを立てる注意が必要となります。
リハビリの臨床で「スロートレーニング」はあまり意味がない
ここまでで、
筋肥大には「総負荷量」「フルレンジ」が効果的
と述べてきましたが、まだ考えるポイントがあります。
それは、
「求心性収縮」と「遠心性収縮」にかかる時間・・・
つまり、
「運動スピード」
です。
どれくらいのスピードで行うのが効果的かというと・・・
答えは、
8秒以内
です。
ニューヨーク市立大学のシェーンフェルドらが8つの研究結果をもとにしたメタアナリシスで運動スピードと筋肥大の関連を検証したところ・・・
・8秒以下の運動スピードであれば速くても遅くても筋肥大の効果に有意差はない。
・8秒より遅いと筋肥大の効果は低い
と結論づけられています。
リハビリテーションの筋力トレーニングでは「頻度も総負荷量次第」
1回のトレーニングで筋肥大に効果的な方法は分かりましたが、
まだ貴方の頭を悩ませるのは「頻度」
だと思います。
「超回復」という言葉があるように、
筋肉が回復するのに2~3日間かかるので、
「筋肥大を効果的に起こすのであれば週に2~3回が丁度良い」というのが通説です。
しかし、これも
「週単位」の「総負荷量」で決まる
ということが報告されています。
2018年、オクラホマ州立大学のコルクフーンらが以下のように報告しています。
トレーニング経験者を集めて週3回トレーニングのグループと週6回トレーニングのグループに分けスクワット、ベンチプレス、デッドリフトを行わせた。
3種目ともに週単位での総負荷量は同じになるように強度と回数とセット数を設定した。
このトレーニングを6週間継続したところ、両グループで筋肉量の増加に有意差は認められなかった。
つまり、
筋肥大を起こす頻度は「週の総負荷量が同じ」であれば、
「週3回」だろうが「週6回」だろうが変わりない
ということです。
【まとめ】
いかがでしたしょうか?
筋肥大を起こすには高強度のトレーニングが必要だけど、
「高齢者の方が対象だと、高強度トレーニングは中々難しい」
と思っていた貴方には、目から鱗のような結果だったのではないでしょうか?
とは言っても、
「軽すぎる負荷で設定していることも多い」
場合もありえますので、
「それなりに疲労感を覚える負荷量を設定してあげると良い」
と言えるでしょう。
リハビリの臨床で、
「筋力トレーニングの負荷量に普段から悩んでいる」
という貴方は、ぜひ今回の記事を参考に適切なトレーニングを提供してみて下さい。
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